山の人
昨日の絶対方位感の話で思い出したこと。
私の言う「山の人」というのはたいがい「山岳民族」の事で、
この『絶対方位感』という言葉を思いついたのは、彼ら山岳民族はものすごい方角感覚を持っている、という事を知ったのがきっかけでした。
日本に農業研修で独り、タイはメーホンソンの山奥からやって来たアンポンさん(本名です)は、カレン族でした。彼は私の実家にホームステイしていて、最初はまったく話せなかった日本語も、徐々に話せるようになり、時々わたしと一緒に電車に乗って出かけたりしていました。
私の実家は当時神戸市営地下鉄沿いの、「西神南」というところにありました。そこから地下鉄に乗って「三宮」まで約30分。
アンポンさんは時々地下鉄の何も景色のない真っ暗な窓を眺めては
「ヤスコさん、今、ヤスコさんの家はこっち側ですね。」
「ヤスコさん、今、ヤスコさんの家はあっち側ですね。」
と、ほぼ正確に私の家の方角を言い当てる。
最後三宮に着く10分ほど前には二人でうとうととうたた寝をし、寝ぼけ眼で下車し、エスカレーターや階段をぐるぐる回って、地上へ出た。
いきなり人ごみの中に放りだされても、アンポンさんは(尋ねてもないのに)
「えーと。。。
ヤスコさんの家は、
あっち!」
とドンピシャの方向を指差すのでした。
方向音痴の山岳民族なんていないと思うし、彼らは持って生まれた体内磁石の磁力がものすごいのだと思う。毎日青青とした山の中を何時間も歩いて畑に行き、キャベツを作り、竹を切り、ブタを追い。。。どちらが北か南かも分からない山の中でも彼らの「家」に帰ろうとする磁力という物のはいつも研ぎ澄まされている必要があったに違いない。そうやって自然に身につけた抜群の方向感覚を武器にアンポンさんはいつも一人、西神南ニュータウンの中をうちの実家の犬を連れてうろうろとしていました。そして絶対に迷ったりせずに帰ってきていたのでした。
by iroirostyle
| 2009-06-13 23:05
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