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チェンマイ BIG-C その2

<<その1のつづき。。。

 その黒くて小柄のガードマンはこっちこっちと私を自分の持ち場所まで手招きした。
駐車場を出る買い物客から無料駐車券を受け取ってゲートをくぐらせるのが
彼の仕事。
ピピっ。ピピっ。
笛を吹きながら、なぜか駐車券を受け取るとき
彼は敬礼。
軍隊ですか?と言うような少し間抜けな感じ。

帰宅ラッシュの時間帯とだけあってゲートに車はどんどん来る。
彼はてんてこ舞い。
ほんの10秒ほど車が途切れるとこっちを見て
「にっ。」
と笑う。
何度も彼のその「にっ。」を見ていると
不思議な気分になってきた。
…この人きっとタイ人じゃない。
山岳民族か、ビルマの人か?

すると彼は私に大声で尋ねる。
「マーチャー、ティーナイ クラップ?」(どこから来た?)
「日本です。」
「イープン!(日本)ニホン!いいね~!いいね~!」
(何がいいのか良く分からないけど…)
「僕は 中国、ユンナン(雲南)から来ました!」
「!」
話を聞くと、彼は中国の雲南省から12年ほど前、タイに仕事を求めてやってきたらしい。
雲南省は何百、という少数民族が暮らす中国の中で私が一番興味のある地。
彼もその少数民族の中の一人だったのだろうか。
小柄で筋肉質な感じの体格や、肌の色がそんな事を連想させた。
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「日本語知ってるよ!『アジノモト!アジノモト!』 わははは~…」
「…」
(タイで『味の素』の知名度は凄い。日本よりも高いかも…)
苦笑いする私をみてまた彼が「にっ」と笑う。

「日本語を教えて! 『Sawaddee krab』 は?」
「コ・ン・ニ・チ・ハ・!」
「ちょっとまって。まって。・・・ペン、ペン!」
必死でメモを取ろうとする彼。
でもゲートをでる車は次から次へとどんどん来る。
右手にペンと紙。左手に笛。そして敬礼!
もう大変なことになってる。

しばらく車が来ない…となるとまたこちらを見て
「次!『KIN KHAAO』は?」
「ゴハン、タベル!」
「ゴーハーン… ターブールー…」
「タベル!」
「ターバー?ターブァー?・・・」
「ターベール!」

「ププーッ!」
「何やってるんだ?」とばかりに急かすような車のクラクション。
出て行く買い物客は皆彼と目も合わさずなんだか冷たい。
そうだね~。
今は勤務中だから。日本語の勉強してる場合じゃないね~。
でもこんな日本語覚えてどうする気なのでしょうか?
暗闇の駐車場で仕事に追われつつも
わずかな日本語を習得しようとする彼の必死さは微笑ましかった。

15分ほどしてソンテウが到着。
助手席には眠そうな女の人(運転手の奥さん)が座っている。
運転手は凄く痩せた、とても優しそうな顔のタイ人だった。
なんだかその2人の優しい雰囲気にホッとしてしまう。
いやいや。。。いけないいけない。
まず心配だった運賃を確認する。
案外安かった。まあ、普通よりはかなり高かったけどチャーター便だし…
ぼったくり。。。という感じの金額では全然なかった
最初の言い値より10バーツほど負けてもらって交渉成立。

そのソンテウの運転手に聞くと
チェンマイはソンテウは7時までしか走っていないのだそうです。
だから家に帰って休んでいたんだ、と。
そしたらあの友達(BIG-Cのガードマン)から電話が入って
『ダウンタウンに帰れなくて困ってる人がいる』と聞いて
あなたを迎えに来たんだよ。って。
僕の家がBIG-Cのすぐ近くだったからよかったけど
だれもこんなとこまで迎えに来てくれないよ~…と。
彼はニコニコ笑いながらゆっくり分かりやすいタイ語で話してくれました。

そうだったのか~。
ソンテウって7時までなのか~。
知らなかった~。
…またやってしまったな~…
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BIG-Cからナイトバザールまでの道中、インド人1人、白人1人、
私以外に2人の乗客を拾い
その都度「おお!ラッキー!」と凄く嬉しそうに笑うそのドライバー。
私も一緒に喜んでしまいました。
だって私だけのために出てきてもらってさらにそれ以上の儲けが出たわけだし。。。

そうやってチェンマイの夜は当たり前のように更けていきました。

でもちょっとだけ思ったのは、
一人のドジな日本人と
一人の雲南出身のガードマンと
一人のタイ人ソンテウドライバーが
ぐるぐるまわるこの巨大な球体、地球という惑星の上で
ちょっとだけ同じ時間を過ごしたっていうのは、
ものすごい奇跡的な事なのかもしれない。
と、いう事。です。


  <終わり>
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by iroirostyle | 2008-01-24 22:32 |